| 「学生にどこまで求めてよいか?」の基準として役立っています |
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話し手:大森亜紀さん
話し手:埼玉医科大学病院 南館5階病棟 臨地実習指導者 ※取材時
取材日:2007年7月27日
取■材:日総研グループ |
『今どきの看護学生を育てる 成人看護実習指導者マニュアル』の第2章には、主要疾患ごとに整理された指導者用マニュアル「成人看護実習の手引き」が収録されています。
これは成人看護実習で学生が受け持つ頻度が高く、また看護師国家試験での出題率が高い領域にしぼり、さまざまな臨床経験・教育観をもつ指導者が等しく学生をサポートできるように、「何を・どこまで教えればよいか」をまとめたものです。
この「成人看護実習の手引き」を実際に活用している臨地実習指導者の大森亜紀さんにお話を伺いました。
―「成人看護実習の手引き」は、どのように役立っていますか?
私たちの病棟では、実習指導者だけでなく、スタッフみんなで学生にかかわっています。学生が好き、教えることが好きなスタッフが多いのですね(笑)。しかし実際に実習指導にかかわると、学生に考える時間をもってもらいたいと思うものの、「学生にはどこまで求めてよいのだろう?」「どこまで質問をしてよいのだろう?」と迷うことが少なくありません。
そのとき「成人看護実習の手引き」には、具体的な内容や指導上の留意点がまとめられていますから、「何を・どこまで教えればよいか」の範囲を参照できます。実習指導者の立場としては、手引きを確認しながら、スタッフに「ここまでは学生に質問していいですよ」「ここから先は、資料を渡してあげたり、自分で教えられる範疇で教えてあげたりしていいですよ」とサポートをすることができるので助かっています。
―実際の活用場面を、もう少し詳しくお聞かせください。
新人看護師の指導と学生の指導では、目的も求める内容も異なりますが、ともすればスタッフの中には新人と同等のレベルを学生に求めてしまい、「なぜ答えられないの?」「どうしてここまで調べていないの?」という対応をしてしまう人もいます。
そうならないためには、学生がどこまで学校で教わってきているのか、先生方がどこまでの学習を学生に求めているのかを踏まえておくことが不可欠です。そういうところで、「それは看護師になってから学べばいいことですよ」とスタッフに伝えるなど、緩衝材のような役割を私が担っています。その上で「成人看護実習の手引き」を1つの基準にしている、という感じでしょうか。
ある部分から先は、教員に相談したり、繋いだりしていきますが、それ以前に、こうして文書化された手引きが手元にあることで、逐一教員にお尋ねしなくても、たいていのことは私のほうで判断して指導に繋げていけます。
実習が始まる前に、病棟ごとに教員と打ち合わせの時間を設けますが、その際に、実習生を受け入れる側として、私たちから伝えたいこと、お願いしたいことがあります。例えば、「この病棟にはこういう患者さんがいます。だから学生は、最低限ここまで勉強してから実習に来てほしい」といったことですね。この手引きには、そうしたポイントや留意点も含めてまとめられているので助かっています。その上で、私たちの見解を加えつつ、実際の実習指導に携わっているという感じです。
―大森さんが「実習指導者を経験してよかった」と思う部分はありますか?
私は、看護師になって10年目で、指導者になって約5年が経ちました。現在、当院では、実習指導者養成の1年コースを設けており、そこでは学校の教員に講義をしていただいたり、教育への思いに触れたりすることができます。
以前は、そうした学習の機会を得ないまま実習指導に携わっていました。その頃は、教員の意図や方針に理解が及ばなかった部分がありましたし、学生の姿勢や態度に「えっ?」と疑問や抵抗感を覚えることも少なからずありました。
それが1年コースで学んでみて、「学生は、こういう思いで実習に来るのか」「教員はこういう思いで学生と接しているのか」ということがわかり、ずいぶん学生を見る目が変わったように思います。
私はもともと後輩に対しても、指導すべきところは率直に厳しいことを言ってしまうほうなのですが、同じ指摘をするにしても、学生の思いがわかったことで、受けとめ方が変わったり、言い方を変えられるようになったり、接し方が柔軟に変化してきたように思います。相手が失敗した時でも、頭ごなしに叱るのではなくて、「どうしてこうなっちゃったの?」と理由を聞いて、一緒に考える余裕が生まれたように思います。
それは学生指導だけでなく、1年目や2年目の後輩を指導する時にも、相手の今の状況を考えてあげられる気持ちの余裕が出てきました。つまり、「自分が1年目の時はこうだったな」と省みて考える余裕ですよね。
―印象に残っている学生さんとのエピソードなどはありますか?
私たちの学生時代は、「狼の群れに投げ込まれた羊たち」のようなもので、実習と言えば、怖い看護師たちの中に学生が入ってワーワーやっているような感じでした。臨床の看護師は「怖い」「嫌だな」「意地悪だな」と感じたこともあり、「将来、ああいうふうにはなりたくない」と思いました。その時の気持ちを、自分が実習指導者になった時に思い出して、学生にそう思われるような実習指導者にはなるまいと自戒しました。
それでも、あるとき、連絡せずに遅刻をしたのに謝るでもなく、平然と「寝坊しました」と言って入ってきた学生に、つい「明日から来なくていい!」と怒鳴ったりしたことはあります。周囲がシーンとなってしまって、「とうとう言ってしまいましたね…」みたいな空気が流れましたけど(笑)。
ほかには…一生懸命に教えても、その子がなかなか変化してくれないと、こちらも悩んだり落胆したりしますよね。例えば、「私はただ看護師の免許が取れればいいんです」という感じで、患者さんの思いもわかろうとしてくれない学生と出会ったりすると、「どう指導したらいいんだろう…」と困惑したり。
それでも、学生からの感想に「今まで行った病棟でいちばんよかったです」と書いてあったりすると、すごく嬉しいし、教え甲斐がありますよね。そうやって張り合いを感じたり、時には悩んだりしながら実習指導にかかわってきたことが、巡り巡って、後輩や患者さんとのかかわり方やさまざまな場面で、仕事全体に反映しているな、と思います。
―ありがとうございました。
(文責:市川芳嗣)
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