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Q1.キネステティクはどういう意味ですか?
A1.「キネ」は動き,「エステティク」は感覚の学問という意味です。患者さんの手や筋肉から伝わる感覚や動きを通して,患者さんとコミュニケーションをとりながら介助する技術です。キネステティクの「テ」を強くちょっと長めに発音します。
キネステティクでは患者さんの動くという感覚を大切にします。患者さんとの「動きの感覚」を通して,コミュニケーションをとりながら介助するところがこれまでの介助方法と違う点です。
Q2.キネステティクはどうして介助者がラクチンで腰も痛くないの?
A2.キネステティクによる介助のコツは「決して力を入れないこと」なのです。キネステティクによる介助で,患者さんは自分で動く感覚を思い出します。患者さんが自分で動き,できないところだけ手伝うのです。持ち上げたりする無理な介助はしません。患者さんの足りない動きを手伝うだけです。本来,患者さんの腕や腰がやっていた仕事の「一部を手伝う」だけで十分ですから,あなたの腰や腕に負担がかかるほどに「力を使うのはおかしい」のです。だからとってもラクチンなのです。
Q3.キネステティクでいう自然な動きを介助するってどういうことですか?
A3.たとえば,仰臥位から長座位になるとき,普通の人はまず,側臥位になりますね。そして腕と腹筋などを使ってむくむくと起き上がり,正面を向きますね。これが自然な動きです。この自然な動きが患者さんだけでできないときは,そこを介助するのです。
普通は,腹筋のトレーニングのようには起き上がりませんね。腹筋を使わせる従来の介助法では,患者さんの自然な動きを助けていることになりませんね。
えっ? 電動ベッドで,起こす? これも問題ですね。ベッドは患者さんを起こすリフトではありません。これで起こすと,患者さんは腹筋を使って起きるという不自然な起き方を学習します。腹筋を使って起きようとすると,せっかく腕に力が戻っても,起きられません。自分の「自然な起き方」を忘れてしまうからです。患者さんの自立支援につながりません。座ることができる患者さんには,自分で起き上がることを忘れさせず,思い出させることです。それには,キネステティクで起こしてあげてから,ベッドをモーターで変形させればいいのです。
Q4.キネステティクが自立支援にピッタリとはどういう意味ですか?
A4.キネステティクは毎日の介助の中で,動けなくなっている患者さんに動くきっかけや感覚を思い出させます。患者さんは自分の力を使うのでリハビリにもなります。さらに「自分で動けるんだ」と感じるので「生きる自信」が生まれます。動けるようになったときの自然な動きの通りの介助なので,今は麻痺があっても,回復に必要な筋肉のリハビリになり,自立支援を促します。
Q5.キネステティクとボディメカニクスはどう違うのですか?
A5.一言でいうと「おてつだい」と「おせっかい」の違いです。えっ,それじゃよくわからない? わかりました説明しましょう。
ボディメカニクスはアメリカで生まれました。介助者がラクに患者さんを動かす(運べる)ことをねらいとしている介助技術です。物理学の「テコの原理」を有効に使います。基本はメカニクスです。介助者には良いのですが,患者さんの力も使わせませんし,患者さんのできることもさせません。患者さんは「世話されている」と感じてしまいます。
キネステティクはドイツ生まれです。人間の自然な動きと感覚を考える学問なので,それに基づく介助は患者さんと介助者がいかにラクチンに一緒に動くか(移動するか)を考えます。基本はサイバネティクス(Q5おまけ参照)です。
キネステティクでは患者さんの力をどんどん使わせます。できることもどんどんさせます。患者さんの足りない力やできないことだけ補う介助技術です。これが「おてつだい」です。
患者さんは「自分で動いているようだ,気持ちいい」と感じます。ですからキネステティクは,毎日の介助が患者さんの自立支援になるのです。
Q5おまけ.サイバネティクスとは何ですか?
A5おまけ.サイバネティクスとは,50年程前のコンピュータの胎動期に確立された「コミュニケーションとコントロールについての学問」です。数学,統計学,解剖学,神経生理学,精神科学,心理学,社会学,経済学の研究者が一緒になって,「コミュニケーション」について研究したものです。サイバネティクスは「複雑なシステムのコミュニケーションにはフィードバックが必要だ」と見抜きました。現在では,細胞工学から社会学まで目に見えない形で組み込まれています。カウンセリングにもフィードバックという言葉が出てくるでしょう?
キネステティクは「動きの感覚」を「人間という複雑なシステム」のコミュニケーション方法につかうというサイバネティクス的概念です。
Q6.キネステティクが「動きのコミュニケーション」っていうのがよくわかりません。
A6.キネステティクは介助者が「力が入らないなあ,ラクチンだなあ」と感じれば感じるほど,介助されている患者さんも「自然に動いているなあ,自分で動いているようだ,ラクチンだなあ」と感じるのです。介助を通じて「ラクチン」が伝わります。「ラクチンさ」のコミュニケーションです。ボディメカニクスでは患者さんが,自分で動こうとすればするほど,患者さんが力を入れれば入れるほど介助者はつらい思いをします。
介助するときには介助者の都合で,グワーンと勢いよく動かすのはよくないですね。患者さんの動きを,「おっ患者さんが動き始めたな,これぐらいの力と速さでいいかな,おっ気持ちよさそうな表情をしているな」というように,手や体の感覚を通して感じ取ってください。すると,患者さんの「動き」や「顔」にラクチンさの「表情」がでます。あなたと患者さんのあいだに「ラクチンだ」という気持ちが「動き」を媒体として通じ合います。これがキネステティクの「動きがコミュニケーション」なのです。
Q7.キネステティクをマスターするのは難しいのでは?
A7.ボウリングはできますか? 難しいですか? 「ボールを投げるのは簡単」と言う人もいれば,「ストライクを取るのは難しい」と言う人もいます。パーフェクトを達成するのは誰にとっても難しいですね。
ダンスやスポーツのように「動き」を伴うものは,段階的に上手になります。下手でも楽しめます。練習すればもっと楽しめます。キネステティクによる介助も同じです。入門向きの簡単な介助から,「えーっ」と驚くような華麗な介助まで,さまざまな段階があります。はじめから名人クラスを狙うことはありません。毎日の臨床では簡単な方法を使い,工夫していくと名人クラスのものもできるようになります。毎日の介助がトレーニングにもなります。キネステティクは人間の自然な動きに合わせた介助方法なので,基本さえ理解すれば,自分で発展させていけます。どのような体位変換でも移乗でも,基本を理解して患者さんのどこをお手伝いすればよいのかを考えれば応用は無限大です。だから「創造性」を養おうとするなら,看護・介護の教育にもピッタリです。
ただし,「力を入れて持ち上げて運ぶ」という癖が身についている人は,「癖を抜く」のに時間がかかるでしょう。これから介助を覚える学生のほうが覚えは早いでしょう。
Q8.体験できるセミナーはないの? それにもっと知りたいことがあるんですけど。
A8.著者が個人的に開催しているセミナーがありますが,公開していません。そこで日総研が,キネステティクのすばらしさを一人でも多くの方に体験していただきたく思い,著者の澤口裕二氏を講師にお招きした「体験型セミナー」を札幌・東京・名古屋などの各地で,今年の5月から開催していく予定です。セミナーの詳しい情報ができ次第お送りしますので,資料請求メールをお送りください。あて先はinfo@nissoken.comです。「キネステティクセミナー資料請求」と明記してください。
また,もっと知りたいことがあるかたもご遠慮なくお問い合わせください。「キネステティクの質問」と明記してください。

一日も早く多くの施設でキネステティクが実践されることを心から祈っています。

 

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