10秒会話オンライン
言語外コミュニケーションを考える
目的・効果
・会話におけるペースダウンを体験する。
・普段の会話のペースや意識の向け方,聴き方・話し方を振り返る。
・聴き方・話し方の幅を広げる。

方法:ペアワーク
人数:Web会議システムの
参加上限人数まで

所要時間
10~15分
準備
環境調整:参加者には,マイクとカメラが使える環境を準備しておいてもらう。
人数調整:偶数に調整。奇数の場合は,運営スタッフが参加
その他:手本を見せるスタッフとその時の会話内容を決めておく。
エクササイズの進め方
1次の説明をする。
「これから会話のエクササイズをします。各自,次に言うテーマの中から自分が話したいトピックを思い浮かべてください。テーマは,『今,気にかかっていること』『心配していること』『誰かに相談したいこと』です。この中からテーマを決め,話しても差し支えのないトピックを用意しておいてください」
例)今朝,中学生の息子とけんかをしたこと
2次の説明をしたら,あらかじめ決めておいたスタッフが実際にやって見せる。
①「ブレイクアウトルームに入り,Aさん役とBさん役を決めたらすぐにスタートしてください」
②「最初に,心の中でゆっくりと10秒数えます。黙って数えてください」
③「10秒たったらAさんから話しはじめます。話は短く,一度に話すのは1~2文に収めて,普段よりゆっくりとしたペースで話してください」
例)け さ, あ さ ご は ん の と き に …
④「話し終えたら,互いに黙って心の中で10秒数えます」
⑤「10秒数え終えたら,今度はBさんがAさんの話に応答します。つまり会話をします。BさんもAさんと同様に,話は短く,一度に話すのは1~2文に収めて,普段よりゆっくりとしたペースで話してください」
例)そ れ は, た い へ ん で し た ね。
⑥「話し終えたら,沈黙したまま10秒数えます。その後,もう一度Aさんが1~2文でゆっくりと話します。これを強制的に戻されるまで続けます。このようにします」
(あらかじめ決めておいたスタッフが実際にやって見せる)
⑦「今は途中で止めましたが,皆さんはブレイクアウトルームに入ってから,1~2分間会話を続けることになります。ブレイクアウトルームが強制的に終了されるまで,続けてください」
「まずAさんから気にかかっていることについて話をします。ブレイクアウトルームに入って,Aさん役とBさん役が決まったら,Aさんは心の中で黙って10秒数えてから会話を始めてください」
「では,これからブレイクアウトルームに入ります」
3全員がブレイクアウトルームに入ったら,2分~2分30秒後に強制的に戻ってくるように設定する。
4シェアリングを行い,参加者の意見や提案を共有する。
「話しやすかったですか? それはなぜですか?」
「話しにくかったですか? それはなぜですか?」
「聞きやすかったですか? それはなぜですか?」
「聞きにくかったですか? それはなぜですか?」
「いつもの会話と違う感覚はありましたか? それはどのようなものでしたか?」
「いつもの会話より良かった点や新しい発見はありましたか?」
5必要に応じて解説を行う。
「このエクササイズでは,普段と全く違った会話の方法を体験しましたが,普段の自分の会話のペースや,相手の話を全部聞かずに自分の言いたいことを話していることに気づくことができましたか?」
「私たちは,いつも急いでいるので,早口でまくし立てたり,言葉足らずになったりしがちですよね。でも患者さんのことで気がかりなことを相談しにきた部下や後輩に対して,早口でたたみかけたらどうでしょうか」
「自分にはそんなつもりはなくても,相手は焦らされたり,なかなかしゃべれなかったり,考え方が硬直化したり,視野が狭くなったりしてしまいますよね」
「そんな時は,こちらからゆっくり話しかけ,待ってあげましょう。そうすれば,相手はリラックスするので,落ち着いて広い視野・視点で話ができるかもしれません」
「普段よりゆっくりしたペースで話をしてあげたり,待ってあげたりすることは,困難を抱えている人を援助する手法の一つです」
・医療現場は,スピードを求められる場面が多い。「早く,全部言わないといけない」というプレッシャーがあり,早口の人が多い。
・深刻な話・重大な話をしている時や,対立したり噛み合わないと感じたりする時は,意識的にゆっくり話すと(ペースダウン),自分にも相手にも,異なった視点や感情の共有が生まれることがある。その結果,話が進んだり,本当のことを話してくれたり,物事の本質にたどりついたりすることがある*。
・10秒の間を置くことで,相手の話を全部受け止め,自分の解釈を挟まずに耳を傾ける(聞くことのペースダウン)。また,相手を落ち着かせ,リラックスさせることもできる。
*エドガー・H.シャイン:問いかける技術 確かな人間関係と優れた組織をつくる,英治出版,2014.
実施上のヒント
●オンラインで行う場合は,目を合わせることが難しいので,相手の顔に注意を払うという意識を持てばよい。