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【推薦のことば】
地域包括ケア時代の医療ソーシャルワーク実践テキスト 改訂版
(日本医療ソーシャルワーク学会編)

地域共生社会における
医療ソーシャルワークの生きた実践例を学ぶ

日本医療ソーシャルワーク学会 顧問
(国立社会保障・人口問題研究所 名誉所長)
(日本社会事業大学 名誉教授)
(社会福祉法人浴風会 名誉理事長)
京極 宣

 日本医療ソーシャルワーク学会(会長・中川美幸)は今日的な地域包括ケア時代に対応する画期的な医療ソーシャルワーク書を再度上梓した。これにより退院支援の枠を越えた医療ソーシャルワークの生きた実践例を学ぶことができるだけでなく,地域共生社会におけるMSWの役割の可能性を展開している。
 従来の医療ソーシャルワーク論は,どちらかといえば患者および家族へのさまざまな物心両面の支援と退院支援を中心としており,必ずしも地域包括ケアシステムの構築には対応していなかった。またソーシャルワーク技術においても,地域資源を開拓し創造するコーディネイト・スキルの強化にはほとんど言及されていなかった。そのため,例えば,社会福祉士ないし精神保健福祉士の養成施設を経て国家資格を取得したとしても,本格的な医療ソーシャル論も学ばず,医療現場実習もほとんど体験していない。このような新人がMSWとして働きはじめる際の苦難は図り知れないものがあった。
 本書はMSWとして歩みはじめ,患者や家族と共に歩を進める後輩たちを挫折させず,確かな力量を発揮する手法として,日本医療ソーシャルワーク学会のベテランMSWが全力投球し出来上った労作である。
 各々の章では,MSWを目指す学生,新人MSW,初学者のための最新の必須知識が盛り込まれており,特に相談援助に行き詰まりを感じた時の判断のポイントを実際例から学びやすく記述され,繰り返しになるが,医療ソーシャルワークの今日的実践例を学ぶことができる。ここには社会福祉士や精神保健福祉士の業務と理解を越えた医療ソーシャルワーク独自の詳細な解説がある。
 なお本書の特色は,なんと言っても,まず第3部「地域共生社会における医療ソーシャルワーカーの役割」にあり,MSWによる地域包括ケアシステム構築につなげる仕組づくりが,そして地域共生社会づくりに対するMSWの貢献について,本邦で初めて提案されている。
 「おわりに―新しいMSWのポジションニング」では,1989年の「(医療)ソーシャルワーカー業務指針」をさらに進化・深化させた2002年の「医療ソーシャルワーカー業務指針」を踏まえて,次のような積極的な提案をしている。 すなわち,MSWを単なる保健医療分野の社会福祉士とする誤った見解がMSWの独自性を無視し,MSWの業務や専門性の向上の足かせとなってきたとの指摘を行っている。また,MSWの教育養成では卒後の現任者教育にもっぱら委ねられ,卒前教育が全く疎かにされているとしている。ましてやMSWの病院や診療における配置基準が存在せず,さらに2025年を目途としている地域包括ケアシステム構築に向けた期待されるMSWの養成は不問にされているとして,新たな教育課程(社会福祉士養成課程に上乗せしたMSW養成課程)を意欲的に提案している。
 私もそれに共感できる内容だが,国家資格としては医療福祉士(私の造語では地域医療福祉士)を社会福祉士の上級資格としてしまう可能性の難点が払拭できない。しかし言うまでもないが,もし社会福祉士や精神保健福祉士の養成内容に上乗せしたMSW養成課程が担保されなければ,配置基準も診療報酬その他も十分な実現は極めて困難であることは間違いない。
 いずれにしても,本書は21世紀の地域共生社会におけるMSW養成を担保するテキストとして構想した優れた挑戦的専門書である。地域包括ケア時代にふさわしい医療ソーシャルワーク専門職の必要性は,本書によっても十分に語られていると考える。関係各位にはぜひ必読のものとして推薦したいものである。

参考文献
京極宣:医療福祉士への道〜日本の医療ソーシャルワーカーの歴史的考察,医学書院,2008.
佐藤智編集代表:明日の在宅医療 第1巻 在宅医療の展望,中央法規出版,2008.

 

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