こんにちは長英一郎です。改定年には⽇総研主催の診療報酬改定セミナーで全国をまわらさせていただいているのでご存知の⽅もいるかと思います。

 さて、2020年1⽉29⽇、31⽇と中医協総会で公表されたいわゆる"短冊"。短冊は診療報酬改定の概要をまとめたものですが、点数や施設基準の数字の部分がブランクになっています。

 短冊からみえる今後の⽅向性や対策について述べます。

“YOUTUBE”連動で理解が深まる

 突然ですが、皆さんYouTubeは普段ご覧になっていますか? 私は昨年10⽉からYouTubeを開設しました。私のYouTubeでは厚労省の動きをはじめとする医療政策・情勢、医療経営やマネジメントに関する情報を定期的に提供しておりまして、2020年度診療報酬改定についても何本か動画をアップしていますし、今後の改定の情報をタイムリーに紹介します。

 月刊ナースマネジャーでも5月からYOUTUBEと連動して理解を深める連載をはじめます。テーマは「2020年改定を受けて2022年以降の改定予測と病院・看護部が進むべき道」を扱う予定です。よろしければ、早速私のYouTubeにもアクセスしてくださいね。

★速報︕2020年診療報酬改定短冊解説︕ 7対1急性期、地域包括ケア病棟、再編統合、へき地医療、低栄養
https://youtu.be/BqKySD1Dvt0

 

2020年診療報酬改定の短冊解説

【7対1急性期】

 急性期一般入院料1(いわゆる7対1急性期)の重症度、医療・看護必要度(以下、重症度)基準が下記のように引き上げとなりました。

重症度、医療・看護必要度(カッコ内は改定前比較)
I 31%(+1%)
II 29%(+4%)

 従前から評価表を用いたIの評価とDPCデータを用いたIIの評価。改定前はそれぞれ30%と25%と5%の差があったものが、2%(31%-29%)まで差が縮まっています。厚生労働省はどちらで評価しようとも重症度が同じような数値になるよう誘導しています。Iだと看護職員の主観評価が入る余地があるので、いずれはIIの評価に集約化するためです。

 改定後にどのような病院が重症度を満たしやすくなるのか?キーワードは「救急」と「手術」の二つです。「救急」は救急車の搬送が多い病院、特に救急医療管理加算の対象になるような重篤な患者を多く受け入れていれば、改定後重症度はアップするはずです。「手術」を行う外科系の病院は内科系の病院と比較して、重症度を算定できる日数が増えるので、重症度が上がります。

 先日訪問した大腸肛門専門のA病院(10対1、60床)。看護必要度Iの測定で平均重症度が27%。改定前の30%に届かず7対1の申請ができない状況です。しかし、改定によりA病院で行っている下記手術の重症度算定日数が増えます。

       改定前  改定後
腹腔鏡手術  3日   5日
全身麻酔手術 2日   5日

 例えば、ラパコレ(腹腔鏡下胆囊摘出術)の場合、A病院の平均入院日数は5日。今までは3日間しか重症度カウントできなかったものが、5日まで延ばすことができます。単純に1.66倍(5日÷3日)算定できる日数が増えるわけで、全体の重症度も31%を超える可能性があるわけです。

 逆に、認知症の患者さんに心電図モニターをつけて、A項目1点、B項目3点を満たしているような病院は、今回の改定で重症度除外されているので、改定により厳しくなることが予想されます。

【地域包括ケア病棟】

 地域包括ケア病棟について、全体の病床数が400床以上の病院について、制限が設けられることになりました。

 『許可病床数が400床以上の保険医療機関については、地域包括ケア病棟入院料及び地域包括ケア入院医療管理料の届出を行うことはできない。ただし、◯年◯月◯日時点で地域包括ケア病棟入院料又は地域包括ケア入院医療管理料を届け出ている保険医療機関については、当該時点で現に届け出ている病棟又は病室を維持することができる。』

 『許可病床数が四百床以上の病院にあっては、当該病棟における、入院患者に占める、同一の保険医療機関の一般病棟から転棟したものの割合が6割未満であること。』

 400床以上の病院は今後新規に地域包括ケア病棟(病床)を開設することができません。また、現に地域包括ケア病棟を有している場合には、一般病棟から地域包括ケア病棟への転棟割合が6割未満であるという条件が付くことになりました。

 逆に言えば、一般病棟から他病院へ4割は紹介する必要があるということになります。これは中小のケアミックス型病院や回復期系病院にとってはビジネスチャンスであるという見方もできます。後方病院としては400床以上の病院に急性期後の患者を紹介してもらうようアプローチをかけてもいいかもしれません。

 では、400床未満の病院は地域包括ケア病棟を自由に開設できるかというと、それはないと思います。地域によっては回復期(地域包括ケア病棟、回復期リハビリ病棟)が過剰となっている場合があります。過剰地域で新たに地域包括ケア病棟を開設しようと場合、地域医療構想調整会議で他病院から反対され、結果的に開設できないということになるでしょう。

【総合入院体制加算】

 地域の基幹病院や大学病院が算定する総合入院体制加算。小児科、産婦人科を有していないため、同加算の算定を諦めている病院があるかもしれません。これが改正により、他病院と再編統合を進めていけば、小児科、産婦人科等を有していなくても総合入院体制加算を算定できる可能性があります。

 『医療機関間で医療機能の再編又は統合を行うことについて地域医療構想調整会議で合意を得た場合に限り、小児科、産科又は産婦人科の標榜及び当該診療科に係る入院医療の提供を行っていなくても、施設基準を満たしているものとする。』

 総合入院体制加算1の場合、240点(1日につき、2020年改定前)。入院患者全員に毎日2,400円を入院単価に加えることができる(14日を限度)わけですから、病院にとっては大きな収入源です。地域医療構想調整会議は近隣の病院と顔を合わせる貴重な機会。加算算定を目的に再編統合を提案する基幹病院が出てきてもおかしくありません。

 実は、「再編又は統合」という用語が診療報酬の施設基準に織り込まれるのは歴史上初めてではないかと思われます。なぜ再編統合を促すのか?これは医師の働き方改革との関係があります。総合入院体制加算は「病院の医療従事者の負担の軽減」を施設基準に含めており、特に医師の負担軽減を重視しています。

 単一病院で医師の働き方改革が求める年間960時間以内という残業時間をクリアできるのかというとなかなか難しい。となると、複数病院で診療科の再編統合を行い、外科系はA病院、内科系はB病院というような形で医師を集約化すれば、当直後の手術や連続当直は回避できるのはないかと考えています。

 モデルになるのが、2008年の山形県立日本海病院(528床、25科)と酒田市立酒田病院(400床、15科)の再編統合。2病院は、急性期として主要診療科目が被っていましたが、再編により日本海病院は急性期、酒田病院は回復期、療養と機能文化をしています。この結果、日本海病院は医師が休みを取りやすくなり、働きやすい病院として医師が集まるようになっています。

日本海総合病院(旧日本海病院)の医師数
2008年  2011年  2015年
103名   119名  144名

 482ページに及ぶ診療報酬改定の短冊。単に改定前後で変わったことを把握するのではなく、厚生労働省の意図を把握することが重要になります。近年の改定は、患者にとってあるべき医療や看護は何か、そして働き方改革に沿う病院とは何かが問われています。


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 指導講師:長 英一郎氏 吉田克己氏

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