発行日:2021年12月28日

在宅診療部における訪問施設の現状と課題

医療法人 篠原湘南クリニック クローバーホスピタル

小池仁美

在宅診療部 看護師長

 1996年3月国立栃木病院附属看護学校卒業。同年4月国立栃木病院(現・国立医療センター)入職,整形外科病棟・手術室勤務。2000年4月那須南病院入職,内科・外科病棟,内視鏡室,救急外来勤務。2016年4月息子の進学のため神奈川県に転居。医療法人篠原湘南クリニッククローバーホスピタル入職,在宅診療部勤務となる。

石渡俊次

副病院長/在宅診療部門担当

 医師,医学博士,順天堂大学非常勤講師。1998年順天堂大学医学部卒業。2002年公立昭和病院呼吸器感染症科,2004年順天堂大学静岡病院呼吸器内科に勤務。静岡東部ドクターヘリフライトドクターとして病院外診療にも従事。2015年9月順天堂大学准教授。2018年3月順天堂東京江東高齢者医療センター呼吸器内科科長。同年10月医療法人篠原湘南クリニッククローバーホスピタル在宅診療部。同部長を経て2021年4月から現職。

長谷川よし子

看護部長

 1977年3月神奈川県立衛生短期大学卒業。1977年4月茅ケ崎市立病院入職。1981年12月同病院退職。1990年3月神奈川県立看護教育大学校看護教員課程修了。その後,川崎市,藤沢市内などの病院にて看護部長職を務める。2019年4月医療法人篠原湘南クリニッククローバーホスピタルに入職し,現在に至る。

 当院は,回復期・慢性期に位置する170床の在宅療養支援病院である。設置主体である法人は,藤沢市南部の医療活動に携わり30余年,「地域に密着した入院のできる在宅医療,医療のある介護の実践」を理念に掲げ,地域に貢献する医療を目指している。その中で当院は,地域のニーズと国の施策を鑑み,「働き方改革」「多職種連携」「意思決定支援」,今般の新型コロナウイルス感染症においては「発熱外来の開設」など,さまざまなことに積極的に取り組み,その一環として在宅診療部門を有し,24時間対応している。

 今回,新型コロナウイルス感染症禍(以下,コロナ禍)の中で,感染対策や発熱した入居者の診療など,在宅診療部と高齢者施設の連携を考える機会を得たので,ここに報告する。

在宅診療部の概要

 在宅診療部の主な業務内容は,通院困難な患者や自宅・施設での療養生活を希望される患者への訪問診療,在宅療養に関する相談窓口,患者にかかわる介護事業所職員との情報共有,地域に向けた研修会・講演会の企画・運営などである。職員数は2020年12月現在,医師17人(非常勤含む),看護部6人(看護師,介護福祉士および救急救命士),在宅療養支援室3人,医事課職員7人,ドライバー3人の計36人である。

在宅診療部の訪問先の概要および在所割合

 在宅診療部の訪問先は,医療費の保険請求や診療報酬区分から「居宅」「施設」,さらに「特別養護老人ホーム」(以下,特養)に大別され,患者数で見ると施設が最も多い。また,施設は訪問診療のみならず当院への入院患者の紹介元の側面もあり,日頃からの連携は必要不可欠である。さらに,施設に比較して特養は医療費の算定が制限されるため,収益の面からも施設との連携は重要と考えられる。

 2020年11月現在の在宅診療部の患者総数は987人で,居宅,施設,特養と大別すると,居宅252人,施設468人,特養267人と,施設が7割を占め最多である。2017年と比較した人数割合推移を見ても,のとおり,人数割合はほぼ変わらず,施設が最多を占めている。今後も施設患者が最多となる傾向は持続すると考えられる。

図 患者人数割合

施設分類による検討

 当院在宅診療部は,今後の連携を強化するに際して,施設における看護職の有無に着目し,有料老人ホーム,サービス付き高齢者向け住宅(以下,サ高住),グループホーム(以下,GH)に大別して検討した。現在の施設数の内訳,患者数は表1のとおりである。

表1 施設の内訳(2020年11月現在)

 訪問先を見ると,有料老人ホームは歴史的に長期間訪問している施設が多い。逆に,サ高住,GHは近年訪問が増えている。施設の特徴を医療の観点から分類すると表2のようになり,軽介護度の入所者はどの施設も対応できるが,重介護度,看取り期になると有料老人ホームのみとなる。

表2 施設の医療的観点からの分類

LIFULL介護:老人ホーム・介護施設の種類,それぞれの特徴.より一部改変

当院在宅診療部訪問診療施設の現状と課題

有料老人ホーム

 有料老人ホームは,24時間看護師対応が可能か否かで,夜間の喀痰吸引などの医療処置の可否が左右され,その結果,看取りまでの対応が影響を受ける。24時間看護師を有する有料老人ホームは,重症な患者を受け入れていることが多く,こうした患者は短期間に頻回の診療を要する。また,病状の変化と共に,最終的な看取りの場が施設ではなく入院に変更になる場合もあり,機動力が高く,入院もスムーズに行える訪問診療が求められる。このため,入院病棟を要する当院在宅診療部が対応すべき患者層が多い施設と考えられた。

 実際に当院が訪問する24時間看護師配置の有料老人ホームは6施設で,これらの施設では,前述のとおり,持続点滴,吸引などの医療処置が24時間対応できており,施設での看取りに関しても,夜間の医療介護状況を把握している施設看護師の存在によりアドバンスケアプランニング(以下,ACP)もスムーズで,希望に沿った看取りができていることが多い。

 特に,このうちの3施設は,ほぼ全患者を当院在宅診療部が担当しているため,細部に及んで情報の共有,業務連携ができていると感じている。一方,他の3施設はいくつかの訪問診療が介入している。施設としては,いくつかの訪問診療を入れ,患者・家族あるいは施設そのものの意向や医療依存度に合わせて訪問診療を選択していると推察する。

 今回のようなコロナ禍を経験して,当院在宅診療部は,施設全体で意思統一してかかわらなければならない場合,単一医療機関による医療介入では,感染対策など医学的観点を要する方針決定について施設と協議を行って円滑な対応ができたが,複数医療機関が介入する施設の場合には,医療機関同士の連携が難しいこともあり,施設(あるいはその法人)が主導して作成した感染対策などにおいて(一律のキャップ・ガウン着用,アルコール消毒後の手指洗浄など)医療者が疑問に感じる対応もあり,医学的観点が不足する可能性が課題と感じられた。

 看護師の24時間配置をしていない有料老人ホームでの問題点は,夜間は介護スタッフのみの勤務であり,急変時の判断に困る,緊急時の対応ができないなど,看取り期に患者・家族の希望に沿った医療行為ができないため対応困難とされることが多い。一方で,病院との連携ができている施設では,入院中または訪問時に状況に応じて十分な病状説明とACPが行われ,看取りの方針が決定されれば看取りまで対応することができる。ただし,看取りにかかわる連携では,施設ごとにどこまでの医療対応が可能で,どこまでの方針があれば看取ることができるかは異なることが多く,病院側は施設の医療介護環境の実際を把握した上での連携が必要と考えられる。

 このように,24時間看護師配置ができない有料老人ホームとの連携では,細部まで医療の方針を話し合い共有することなど,どのようにしたら施設で最期まで本人の希望を優先できるか(看取りにつながるか)について施設との協議が必要で,とりわけ常日頃の情報共有とACPが非常に重要になる。

サ高住,GH

 さらに,サ高住,GHにおける現状の連携の問題としては,定期診察時,施設スタッフの同席がされないことが多く,情報共有ができていないことがある。過去において,施設職員に同席を求めたところ,物理的に無理だということを申し入れされた経験もある。これに対しては,介護支援専門員,施設スタッフへの連絡・教育のほか,外部の訪問サービスなどを利用するなど施設での介護力を高めることも必要であるが,訪問診療側が高齢者施設を医療の場でなく生活の場であることを再認識することや,介護現場の慢性的人員不足を考えると,そもそも施設に無理な対応を求めるより,伝達方法の工夫や,訪問診療側が早期の対応,比較的軽症な段階からの早めの入院などで,サ高住,GHでの療養生活が適切かどうか意向を確認しながら対応することが有用と考える。

おわりに

 コロナ禍における訪問診療は,電話診療などの対応をせざるを得ない時期もあったが,地域の状況,患者・施設のニーズに応じて,診療抑制は最小限にとどめ診療を継続してきた。経営的な視点からも,患者・家族が望む診療や最期を迎えるためにも,地域に貢献する意味からも,在宅診療部門と施設との連携について施設の種類ごとに現状と課題を検討することで改めて見えてきたことは,患者・家族の意向,施設の意向に沿った対応ができるように情報を共有し,施設に合ったいろいろなツールを使い情報を発信することの大切さである。施設に変化を求めるより,私たち自身が対象に応じた柔軟な対応ができるよう変化させることが有用だと考えている。

引用・参考文献

  • 1)LIFULL介護:老人ホーム・介護施設の種類,それぞれの特徴.
    https://kaigo.homes.co.jp/manual/facilities_comment/list/(2021年11月閲覧)
  • 2)山崎勝博他:在宅診療部における地域のケアマネジャーと医師の連携に関する取り組み,地域連携 入退院と在宅支援,Vol.13,No.4,2020.

※本サービスは事情により予告なく終了することがございます。あらかじめご了承ください。

ページトップに戻る