特定非営利活動法人 コミュニティ・ケア・ネットいずみ
代表理事:森田靖久


   

事例を通じてケアプランを理解する

 前回は,ケアプラン原案を作成する際の記載のポイントについて述べました。今回は,第1回に紹介したYさん(83歳)の事例を用いて,課題分析からケアプラン原案を作成します(資料2〜4)。資料1に,Yさんの課題分析標準項目を用いた情報について再度記載しています。課題分析の展開方法については,第1回のアセスメント編を,記載のポイントについては,前回をご覧になってください。

 


 

ケアプランの作成の流れと留意点

〈作成の流れ〉
(1)第1表:基本情報・介護保険情報
(2)第2表:利用者及び家族の生活に対する意向
(3)第2表:生活全般の解決すべき課題
(4)第2表:長期目標・期間
(5)第2表:短期目標・期間
(6)第2表:サービス内容
(7)第2表:※1
(8)第2表:サービス種別
(9)第2表:※2
(10)第2表:頻度
(11)第2表:期間
(12)第1表:総合的な援助の方針

 

(1)〜(3)では,アセスメント段階で情報収集・分析した内容をベースに作成していくことになります。(3)生活全般の解決すべき課題については,利用者の状態や状況に応じて,優先順位を考えて設定していきます。
 (4)〜(6)については,利用者・家族と一緒に考えていくことを目指したいものです。ケアマネジャーには,利用者が取り組むことや努力すること,サービス事業者が行う個別ケアを引き出し,ケアプランに位置付けることが求められています。
 (7)〜(11)は,考えられた目標を実現するために,誰がどの程度の頻度で実施するのかを明確にしていく部分です。
 (12)は,利用者・家族を含むケアチームが目指す方向性を示すものです。利用者・家族の生活に対する意向を踏まえた上で,長期目標を総合化した内容にすることが必要ですので,最後に作成します。

 

おわりに 〜ケアプランの実現に向けて

 今回まで,ケアプランの陥りがちな傾向と,今後のケアプランのあり方について述べてきました。1人のケアマネジャーが43人(要介護者35人+要支援者8人)の利用者のマネジメントを担当する状況を考えると,「理想論」という声が上がるもしれません。しかし,「理想論」や「到底できない」としてあきらめてしまうのではなく,利用者の「できること」を発見し,それを伸ばしていけるようにサポートすることが,理想論を現実へと変えていくことにつながるのではないでしょうか。
 そして,それを実現する秘訣は,利用者・家族を含むケアチームでマネジメントを行うことです。ケアマネジャーは,利用者がケアプランに参画するようにアプローチすることはもちろんのこと,すべてのケアチームメンバーが提案や意見が言える環境づくりと,提案や意見を懐深く受け入れる度量を持つことが必要です。
 まずは,利用者と一緒に具体的な目標を考えることからスタートしてください。そして,○カ月後に,利用者とあなたで一緒に評価を行い,共に喜び合うことがあなたの仕事に対する充実感となることを切に願います。

 

引用・参考文献
1)森田靖久:居宅版ポジティヴプラン作成ガイド,日総研出版,2004.
2)森田靖久:ケアプランが活きる介護を求めて,おはよう21,Vol.16,No.9,P.12 〜21,2005.
3)長寿社会開発センター:居宅サービス計画書作成の手引,長寿社会開発センター,2006.
4)ケアプラン点検支援マニュアル,介護保険最新情報,Vol.38,2008.
5)コミュニティ・ケア・ネットいずみ:ケアマネジメントセミナー資料,2009.
6)森田靖久,二宮佐和子:介護給付適正化 ケアプランチェックの視点に基づく適切な居宅サービス計画とアセスメント,日総研セミナー資料,2008.


出典:達人ケアマネvol5. no2 2011年2-3月号 ※筆者の所属・役職は執筆当時のものです。
森田靖久氏のプロフィールはこちら


著者の関連書籍
自立支援型ケアプラン立案のための判断根拠がわかる!思考プロセス
A4判 240頁 定価4,260円+税
 

 

 

 

 


日総研グループ Copyright (C) 2016 nissoken. All Rights Reserved. 
お客様センターフリーダイヤル 0120-057671