接遇の大元は、思いやり、心の優しさです。コロナ禍によって私たちはある意味、本来の接遇に戻ったところがあるのではないでしょうか。
とかく現代社会において私たちは、権利を主張し自分が貰うことばかりに傾きがちな面もありますが、コロナ禍では、疲れた人を疲れていない人が助け、物がない人には持てる人が渡し、という“人と人”の本来的なつながりが、思いやりの世界が出てきました。医療現場にマスクがないと知るや、手作りのマスクやフェイスシールドを届けるなど、患者と医療者、利用者と介護者の関係もフラットになり、同じ人間同士としての協力関係に戻ったように感じます。コロナ禍で大変だからこそ、自分よりももっと大変な人のことを思い、多くの人がそれを表現し行動しました。その善意が誤解されず受け入れられました。心からの思いやりが相手に伝わるような流れが、社会の中で起こっていると感じました。
私は接遇を表すのは何よりも“笑顔”だと思っています。マスクをしていても目元で笑顔は作れます。ですが、全身を使った身振り手振り、適切な言葉かけ、タイミングなども含めた“全身からにじみ出る雰囲気”で笑顔を表現することが大事だと、改めて思いました。そのためには、ベースに“心のやさしさ”が必要です。やさしさを表現するには、医療者・介護者自身の心が安らいでいないと出来ません。今回、患者・利用者やそのご家族、さらには地域の皆さんからも“やさしさ”をいただくことができました。大変な時代の中での救いだと私は思いました。
今年ご応募いただいた施設すべてにおいて、患者・利用者はもちろんスタッフも含めた“笑顔”のために、日々大変な努力と工夫をされていらっしゃいました。その姿から私は大きな希望をいただきました。心より感謝申し上げます。
2020年11月30日
一般社団法人 看護&介護ひとづくり協会 理事長
日総研・接遇大賞 選考・審査委員長 高橋啓子
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